病気でもない健康なワンちゃんネコちゃんが一瞬にして窮地に立たされるものとして誤食があります。
玉ねぎ、チョコレートや人間用の薬など中毒を起こすものや、おもちゃや果物の種、紐など消化器に物理的ダメージを与えてしまうもの。
こういったトラブルは日常的に起こります。この時多くの飼い主様はネットで検索をします。そして出てくるのが「塩」「オキシドール」
と思って大切な我が子の為に飛びつくわけですね。気持ちはわかります。でもネット検索は時として危険です。
情報発信者はどのような人ですか?
それを語る知識は十分ですか?
パニックになると人間はその時与えられた情報の真偽の確認を怠ります。
目次
塩
まず、検索して最初に入ってくるのが「塩」というワードです。どの家庭にもあるものなのでこの方法に飛びつかれる飼い主様も少なくありません。パニックなので量を測ったりすることも無く、目分量ということになりがちです。
塩中毒という言葉を聞かれたことはありますか?塩の過剰摂取で起きる中毒で普通に命を落とします。
致死量は論文によって少し幅はありますが
0.5〜1g/kg (中毒症状発現量)
例えば3kgの子の場合1.5〜15gで死に至る可能性があるということです。
ちなみに塩は小さじ一杯で5gと言われています。
確かに吐き出してくれればいいのかもしれません。でも吐いくれなかった時、与えた塩は全て吸収されるという事を知っておいてください。
正しい処置をすれば助かったかもしれない命を奪ってしまうかもしれないのです。すごくお勧めできない方法です。
オキシドール
過酸化水素水とも言われるもので、薬局で普通に手に入れることができます。これも催吐処置としてネット検索すれば必ずと言っていいほど出てきます。
「塩はダメ!」と言うページでも「だからオキシドールを使いましょう!」と書かれています。
確かに病院でも使うことはあるので、まずはその容量を。
でもこれ、組織が結構破壊されるんですね。以前、オキシドールをあげたけど吐かなかったと来院されたワンちゃんの内視鏡をしたことがあったのですが、胃粘膜がひどく荒れていて出血していたんですね。
これは胃の内視鏡画像です。画面中央の薄ピンクが正常の粘膜色でそれ以外の赤みがかった濃いピンクが荒れた胃粘膜です。ところどころ赤い点々が見られるのは出血です。
例えば、おもちゃとか種とかの吸収されないものであればまだ良いとは思います。「胃が荒れた」くらいで済むのかもしれません。
でも玉ねぎとかチョコレートとか薬だったり吸収されるのが怖いものの場合は、注意が必要です。
胃粘膜が荒れて出血した場合、その壊れた血管を通って吸収される可能性です。吸収ルートが増えて吸収量が増えるかもしれないと言う事を知って欲しいんです。
病院でされる催吐処置
吸収されないものの場合
オキシドールを使うこともあります。この他、次の注射という選択もあります。
吸収されるものの場合
注射を使います。注射薬の中には、急速に投与することで吐き気を催すものがあります。これらの薬剤を静脈ルートを確保してそこ(血管)から注入するのです。
まとめ
- 塩中毒の危険性
- オキシドールが消化管粘膜を荒らす
このことは、実際にパニックになってしまう前に情報として知っておいてください。
病院に連れて行くことができない場合、これらの方法を取ることは確か手段としてあるかもしれません。
次回は、催吐させてはいけない場合と物についてお話します。