前回は自宅での催吐処置で使われる、「塩」「オキシドール」の危険性についてお話ししました。
- 病院ではこれらを使った催吐処置というのはよほどの理由や条件が揃わないと実施されないものであるということ。
- 自宅で催吐処置は決して病院の代わりとして成り立つものではなく気軽に行うものではない、最終手段として考えること。
とお話ししました。
目次
異物の流れ
口から入った物はご飯であれ異物であれ、食道→胃→小腸→大腸と流れていきます。
異物の場合、食道と小腸(図で言うと黄色くなっているところ)に詰まりやすいです。
理由はこの部分が細くなっているからで、詰まることを閉塞と言い、食道で詰まることを食道閉塞、小腸で詰まることを小腸閉塞(腸閉塞)と言います。
吐かせてはダメな場合
誤食してから3時間以上が経過している場合
健康なワンちゃんネコちゃんがものを食べた場合、それが胃を通過して小腸に流れるまでに1〜3時間ほどかかると言われています。(この長さには個体差があり、ネコちゃんの方がワンちゃんより通過が早いと言われています。)
つまり3時間以上経過した場合、誤食したものが胃を通過して小腸にあると考えられ、小腸にあるものは吐かせられないことから、催吐処置はただ吐き気を与えるだけのかわいそうな処置になってしまいます。
外出時の誤食などどれだけ時間が経過しているかわからない場合は、その子の行動パターンをよく考えて本当に催吐処置で効果が得られるのだろうかと言うことをよく考えてあげるようにしてください。
状態が悪い場合
何か他の病気を患っていて、元気が低下している状態だったり、吐いたり下痢をもともとしていて脱水が進んでいる場合などです。
催吐処置はとてもしんどく体力を使うものです。処置が終わった後も吐き続けたり気持ち悪さにぐったりしてしまう子も少なくはありません。
また、胃液などでむせ込んでしまって気管と肺を痛めてしまう可能性も考えられます。
自宅での催吐処置はある程度体力の残されている子に行うようにしてください。
吐かせてはダメな物
尖ったもの
例えば、針、串、骨などが相談としてよく寄せられます。他にもとは尖っていなくても、噛み砕くことで鋭利な部分が生じるもの(プラスチックのおもちゃなど)もここに含みます。
病院ではこれらは催吐処置を行いません。
吐き出す際に消化管に傷をつけたり、刺さったりする恐れがあるからです。
食べた物は、口→食道→胃→腸→肛門という流れで通過して行きます。この流れば動物が自然体で行う流れでとても緩やかな動きです。消化管は常にこの方向に食べ物を流すように動いています。
しかし吐かせるという行為はその絶えず続く流れに逆行することになります。これにはとても激しい動きが必要になってくるわけです。
ボートで川の流れに身をまかせるのと逆行するのをイメージしていただくとわかりやすいと思います。流れに身を任せるときは乗っているだけで大丈夫ですが、逆行するときはオールを必死で回さないと行けませんよね。
消化管の中で異物が暴れまわるように色んな動きをしてしまうわけです。これが尖ったものだとすると、刺さる確率が上がるわけですね。
しかも刺さるとすれば道が細くなる食道という場所。ここ、刺さった時に色々と大変な場所なんです。近くには気管といって空気の通り道があり貫通した場合はここにも被害が出ることがあります。
であれば、そのまま通過させる方が色々とリスクが少ないわけですね。(もちろん、内視鏡な度で取り出すことができるならそれに越したことはありませんが、今は病院に行けないと仮定して)
そのまま便として出てくれるかもしれませんし、もし腸管で詰まったとしても、食道に刺さって手術をするよりはだいぶマシです。
紐状のもの
これは意外と知られていないのですが、タオルの切れ端や毛糸、服の装飾など紐状のものも危険です。
くしゃくしゃっと丸まったままでいてくれればいいのですが、お腹の中の緩やかな動きで紐はほどけて一本になりやすいんです。
胃の中に全てがあれば吐き出せるのかもしれませんが、腸の方にある程度流れて行った場合、その部分は吐き出せませんので、吐き出そうとすることによって腸が引っ張られてしまいます。
胃の中に残っていた紐が口から出てきて、それを引っ張ったりするともう大変です。
まとめ
- 誤食してから3時間以上が経過している場合
- 状態が悪い場合
- 尖ったもの
- 紐状の物
上記の場合は、たとえ病院にすぐに行けなくても、催吐処置を行わないことをお勧めします。何かしてあげられることはないか?歯がゆい気持ちはすごくわかりますがそっとしておいてあげてください。
くれぐれも自宅での催吐処置は安易な気持ちで行われないようにお願いします。
ここまで色々お書きしましたが、異物は飼い主様の注意で防げるものです。こういった事故が起こる前に誤食予防についてもしっかりと考えていきましょう。