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血中尿素窒素(BUN)の高値と低値の原因
血中尿素窒素(BUN)とほぼ同義である尿素は、
②肝臓で無毒化して作られるもので
③腎臓から排泄される
とお話ししました。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
この内容をもとにBUNが高値や低値を示したときに、どのように原因を判断するのか説明していきます。
BUNの基準値
病院または、使用している検査機器によっても多少の変動はありますが、大体は以下に示す通りです。
猫:15 ~ 33 mg/dl
高値の原因
脱水
体の水分が足りないと、当然血は濃くなるので尿素も濃くなります。また体が潤っている状態であれば尿として捨てるはずの水を、腎臓は体に戻すように働きます。しかし、この戻す水分には尿素が含まれているので数値は高くなります。
高タンパク食
お肉のような動物性でも大豆のような植物性でもタンパク質を過剰に摂取すれば上昇します。理由としては尿素はタンパク質から作られる老廃物だからです。
上部消化管出血
口、胃や食道、十二指腸など上部消化管に出血があると血を飲んだのと同じ状態となり、消化管に血が取り込まれて行きます。血は多くのタンパク質を含むために高タンパク食と同じことが起こり上昇します。
鼻血でも血を多く飲み込んだ場合は同じようにBUNの上昇が見られます。
腎不全
腎臓の働きとして尿の生成があります。
詳しくはこちらの記事をご覧下さい。
腎臓は生成する尿に血液中に含まれる老廃物を詰め込む仕事をするのですが、腎機能が落ちてくるとこの老廃物の詰め込みがうまく出来なくなります。
また腎臓には尿生成の際に水分を極力捨てないという働きもあるのですが、腎機能の低下によって水分を過剰に捨ててしまうようになります。
これによって脱水が引き起こされるのでBUNはこちらからも上昇してきます。
低値の原因
肝機能障害
尿素は肝臓で作られるので、肝臓の働きが落ちてくると十分な尿素を作ることが出来ず、BUNは低値を示すようになります。
飢餓 低タンパク食
尿素の原材料であるタンパクが摂取できないと、肝臓が健康であっても尿素を作ることができなくなるので必然的にBUNは低値を示すようになります。
多尿
ホルモン異常が生じる内分泌疾患や薬の影響で尿が増えすぎると、BUNの排泄も促進するために低値を示します。
BUN 高値と低値の原因まとめ
BUNの高値
・脱水
・高タンパク食
・上部消化管出血
・腎不全
BUNの低値
・肝機能障害
・飢餓 低タンパク食
・多尿
基準値を外れた場合は、これらの可能性を疑い、他の数値や他の検査、全身状態や症状を見て可能性を高めて行きます。
クレアチニン(Cre)の高値と低値の原因
似たような名前でクレアチンという物質があります。これはクレアチンリン酸という物質を行ったり来たりして筋肉が動くエネルギーとして働いています。
このクレアチンリン酸が筋肉で代謝されてできた老廃物がクレアチニンです。この老廃物は腎臓で尿の中に含まれた状態で排泄されます。
Creの基準値
病院や検査機器によって幅はありますが
猫:0.8 – 1.8 mg/dl
※小型犬では1.0 mg/dlを上限として考える
高値の原因
腎不全
クレアチニンは腎臓で排泄されるので、腎臓の働きが落ちてくると排泄量が減って体の中に残ることとなります。
BUNも同じように腎臓の働きが落ちると上昇しますがこちらは脱水や高タンパク食などでは上昇しないため、腎機能の低下を判断する数値としてはBUNより信頼性が高いといえます。
激しい運動
運動をすると材料となるクレアチンリン酸がたくさん作られるので結果としてそれを分解した老廃物であるクレアチニンも増えます。
この傾向は筋肉量の多い大型犬でより顕著に見られます。小型犬の場合は、どんなに鍛えていても絶対的な筋肉量が少ないため、運動が原因で上昇することはまずありません。
低値の原因
多尿
ホルモン異常が生じる内分泌疾患や薬の影響で尿が増えすぎると、BUN同様にクレアチニンの排泄も促進するために低値を示します。
筋肉減少
極度の栄養不良や麻痺などによる筋肉の不使用では筋肉量が激減するために、結果としてクレアチニンも減少します。
Cre 高値と低値の原因まとめ
クレアチニンは腎機能と筋肉量と深く関わる数値です。
Creの高値
・腎不全
・激しい有働
BUNの低値
・多尿
・筋肉減少
まとめ
少し難しい話になりましたが、BUN,Creは病院の検査でよく測定され目にすることが多い項目です。
もし、基準値から外れるようなことがあれば、原因探しに是非参考にしてみてください。